二つの海を彷徨いながら
 バスタブに満ちる、温かい湯。
 体温を溶かし、肌にゆっくりと馴染むベッドのシーツ。

 倦怠と疲労に包まれた身体には、どちらもなかなかの心地よさだ。
 うとうととまどろみ始めたところで、頬を撫でる手に、重くなってきた瞼を上げる。
 酷く緩慢に見えたらしいその動作に、間近でこっちを覗き込むアーチャーが少し、申し訳なさそうな顔をしていた。
「……どうした…?」
「…いや…、起こしてしまったのなら、済まない、と……」
 こう言う時のこいつは、何を言っても、いや、とか、でも、とか返してくるのをいい加減、知っている。
 だから首を横に振って、犬猫みたいに奴の掌に懐く。その掌にキスをして、両腕を伸ばした。
 言葉よりも雄弁に語る行動を向けて、謝罪を紡ごうとする奴を、シーツの海に引き込む。
「……そう思うんなら、お前が…責任持って、寝かしつけろ、よな…」
 また直ぐにやってくる眠気は多分、こいつの体温に誘発されてのものだ。
「………承知した」
 眠そうに瞬きをした後、向けられた了承の言葉に、応え代わりに引き寄せた身体を抱き締める。
 呼吸のリズムを沿わせて、肌から伝わる心音を聞きながら瞼を下ろした。



【5-6】二に関する5つのお題(その1)/配布元:F お題配布所 F
弓さん槍さんバカップル風味短文お題・その4。
所謂ピロートークって奴です。事後はいいものですネ。(黙れ)

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