二度と言わない
「よし、じゃあ今度は、お前が聞けよ」
 床からとりあえず身を起こして、乱雑に散らかした服も纏め。せめて下着ぐらいは着けて、説教をひとしきり終えたアーチャーの肩を叩いた。
 片付けの手を緩めずに訥々と文句を言えるってのはある種、稀有な才能だ。本人にしちゃ、褒められたくもねぇ箇所だろうが。
「……何をだね……」
「いいからいいから、ほら、こっち向け」
 作業の手を押し留めるような俺の横槍に、深々と溜息をついたアーチャーがこっちを向く。
 二度とは言わねぇから、と前置きをして顔を寄せる。
 いつものように鼻先を摺り寄せて、唇が触れるか触れないかの距離で。

「     」

 言葉の最後に、唇を吸って離れる。
 意味を理解するまでたっぷり十秒近く掛かって、口をへの字に結んだアイツの顔に、勝ったような負けたような、そんな気分を同時に得て、俺はまた笑った。



【5-6】二に関する5つのお題(その1)/配布元:F お題配布所 F
弓さん槍さんバカップル風味短文お題・その3。
空白にはお好きな、愛の言葉(…)をどうぞ。

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