二重瞼のその奥の
 灰の虹彩を見詰める。
 間近で移り込む緋色が、より深い色に移っている錯覚を覚えて少し、目眩がした。
 どうせ焦点も結べないほど近い距離の癖に、俺は何を見ているのかと、馬鹿馬鹿しくなって笑う。
「……どうした?」
「んー……?」
 灰の眸の持ち主が、くすぐったそうに身動ぎして、問いかけてくる。
 お前の眼に見蕩れてたなんて言ったら、こいつはまた、怪訝そうな顔をするんだろう。
 その様子が容易に想像できて、応えの代わりに笑って、奴の唇をまた呼気で擽った。
「……ランサー?」
「…何だよ。良いからちょっと、……静かにしてな、アーチャー…」
 重なる問いの声は、予想して思い描いていた通りの、怪訝そうな色。
 唆す調子で囁いて、黙らせた後の不満やら答えを言ってしまう前に、さっさと唇を塞ぐことにした。
 くぐもった、息を詰める時に漏れる低い声が聞こえて、それが心地よく鼓膜をなでる。

 向かい合わせに跨って、寄せ掛けたこいつの下肢に熱が熾るのを感じて、密かに息を呑んだ。



【5-6】二に関する5つのお題(その1)/配布元:F お題配布所 F
弓さん槍さんバカップル風味短文お題・その1。
相変わらずの槍さん視点です。

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